精進料理を食べたことがありますか?
2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に選ばれましたが、
その和食の祖とも言える日本の伝統食、「精進料理」。
精進料理の歴史はとても長いですが、
一般の人にはあまり身近な存在ではないですよね。
「質素で地味」
「あまり美味しくなさそう」
「所作が難しそう」
「お堅い伝統食」
もしかしたら、そんなイメージがあるかもしれません。
私も体験してみるまでは、正直あまりよく知りませんでした。
でも実は精進料理は、長い歴史に裏打ちされた、
とても懐の深い食文化なんです。
これから海外の熱い視線にも耐えうる、
日本が誇れるもののひとつではないでしょうか。
今回は、以前私が禅寺で体験した精進料理の素晴らしさを、
みなさんにシェアしたいと思います!
精進料理とは?
そもそも精進料理は、寺院で修行をするお坊さんのための食事です。
「精進」とは、修行に専念することを意味します。
ですから、一般の人に馴染みが無いのは当然ですよね。
仏教には不殺生の教えがあるため、肉、魚介類を食べないことが大きな特徴です。
タンパク質は主に大豆やゴマなどから摂ります。
でも実は、一口に精進料理といっても、
宗派、寺院によってその内容も様々なんです。
例えば厳しいところでは、
ニラ、にんにく、葱、唐辛子など、
刺激の強いものを使わないところもあります。
禅宗の食事係、典座(てんぞ)さんの役割
禅宗のお寺の精進料理は、
数ある宗派の中でも歴史的に素晴らしい発展を遂げてきたそうです。
禅宗では食事係のことを「典座(てんぞ)」と呼びます。
座禅や作務(掃除)などの毎日の仕事と合わせて、
食事の準備も非常に大切な修行とされているため、
皆の食事を作る典座さんは非常に重要な役職です。
決して新入りの若い人がやる雑務ではなく、
選ばれた人しか出来ません。
永平寺の祖、道元禅師が、「典座教訓」という食生活全般、
お料理の心得について説く本を書かれていているのをご存知ですか?
今でも禅の心や精進料理を学ぶ人のテキストとなっています。
今から780年ほど前に、
今でいうお料理本のようなものが書かれていたなんて、
とても面白いですよね!
それほど、食事は昔から修行の中で大切な位置づけだったということです。
精進料理のメニューはどんなもの?
私は以前、京都のある禅寺に、3泊4日の修行体験に行きました。
はじめての禅や作務体験もさることながら、
実はその時に食べた精進料理の味が感動的で、今でも忘れられません。
その料理内容を、少しご紹介させていただきます。
食事は、毎日決まった時間に、
厳しい作法に則って静かに頂きます。
音を立てて食べてはいけません。
食事も大切な修行の一つなので、
作法を実践しながら、一つ一つに集中します。
ただ私が参加した禅寺の体験では、
昼食は和やかな雰囲気の中で一般的な食事をとりましたので、
今回は朝食と夕食をご紹介します。
■朝のメニュー
- お粥
- すりごま(お粥にかける)
- 香物(たくあんや梅干などの漬物)
- ほうれん草のお浸しなど
■夜のメニュー
- 白ご飯
- 味噌汁
- 香物
- 季節の野菜の煮物2品ほど
始めは、質素な食事に物足りなさを感じるのではないか?
と少々不安でしたが、いざ頂いてみると、
本当にびっくりするほど美味しく、
すぐに毎度の食事が楽しみになりました。
お寺で採れた新鮮な野菜を頂けましたし、
全ての料理に、正確な理論と手順に則った下ごしらえがなされていて、
なんでもない白米や味噌汁・煮物だけでも、匠の技だと思わされました。
そして驚いたことに、3日目、4日目と日を重ねるうちに、
身体から毒が出て、体調が整っていくのを感じました。
帰る頃には、全く期待していなかったのですが、
お肌がとても綺麗になっていました。
規則正しい生活と労働、精進料理のおかげだと思います。
家でもできる精進料理のポイント
家でも精進料理に則った食事をして、
食生活の乱れを正してみませんか?
以下のポイントを参考にしてみてください。
- 穀物、野菜、豆類で構成する
- 肉、魚介類を使わない
- 出汁にも鰹節や煮干しなどは使わず、昆布やシイタケを基本とする
- ニラ、にんにく、葱、玉ねぎ、唐辛子など、香りの強いものを使わない
- 朝はお粥、昼と夜は白ご飯が基本
- おかずは豆腐やこんにゃく・人参・ゴボウなど季節の野菜の煮物、たくあんなどの漬物
- 基本をおさえ、素材を生かした調理を心がける
- 毎日決まった時間に食事をとり、朝は空腹で目覚めるくらいが良い
まとめ
- 精進料理は修行を支える大切な食事
- 禅寺の「典座さん」は精進料理のスペシャリスト!
- 精進料理は、予想外に美味しい!
- 家でも精進料理で心と身体を整えられる
禅寺では、
人は得ることではなく
「捨てること」が大切
と教わります。
きっとそれは食事も同じで、
飽食の現代人は栄養をいかに多く摂るかが健康のカギと考えがちですが、
実はいらないものをできるだけそぎ落としていく、
ということが大切なのかもしれません。